横断歩道と交差点
2014 / 03 / 30 ( Sun ) 盲導犬と歩いている時、横断歩道と交差点は、けっこう気を使うポイントです。
前にも書きましたが、盲導犬は信号を見分けることができません。 「えっ?、盲導犬が赤信号でピタリと止まったので感心したことがあるけど」 と思う方もいるかも知れません。 でも、盲導犬が仕事中にやってくれることは基本的には次の三つなのです。 ○障害物をよけること ○段差があったら止まって知らせること ○左側に曲がり角があったら少しだけ入り込んで知らせること 信号の手前で犬が止まるのは、そこに段差があるからです。信号が赤信号か青信号かは関係ありません。。 ちなみに、段差がない場合は犬は止まってくれません。 では赤信号や青信号はどうやって判断するのでしょうか? これはユーザーである私の役割で、私が耳で周囲の音を聞いて判断しているのです。 歩道を歩いていて、犬が段差で止まったとします。 私はまず「グーッド」と犬をほめます。 頻繁に通るルートなどでは、慣れてしまってほめるのを忘れてしまいがちですが、これを怠ってはいけないのです。 仕事をしている犬にとって、ユーザーがほめてくれることがうれしいごほうびだからです。 つまり、犬は「またほめられたらうれしいな」、と思って仕事をしてくれているのです。 感謝の気持ちはちゃんと口に出すことが大事、というのは人間でも犬でも同じことのようです^^。 訓練中に「今、ちゃんとほめてあげて下さい」と、訓練師さんから何度も言われたことを思い出します。 犬が横断歩道の手前で立ち止まったら、次に、私は耳で車の流れを確認します。 車が目の前を通り過ぎていくなら赤信号、私の進行方向に流れていれば青信号です。 では、私の進行方向の対向車線を走っている車の音だけがしている場合はどうでしょう? 対向車線を車が走っているのだから当然私の進行方向はおそらく青信号、と予想できます。 でも、ここで注意しなければならないのは時差信号の存在です。 対向車線の車の音がしても、それが右折信号で右折してくる車の可能性があり、その場合は私の目の前は赤信号になっているのです。 以前、あまり知らない短い横断歩道で「細い道だから時差信号ではないだろうし、対向車線が走っているのだから青信号だな」と判断して渡ったら右折車が曲がってきてクラクションを鳴らされたことがありました。 この体験以来、私は自分の進行方向に走る車を確認しない限りは渡らないようにしています。 ときには、進行方向の車がなかなか通らないで待ってしまうこともありますが、急いで危ない目に遭うよりはましです。 そんな時には、通りがかりの親切な人が「今、青ですよ」と教えてくれることもありますし、同じ方向に横断する歩行者がいるときは、その人について横断します。 自転車がすばやく渡って行くときは、なるべくついて行きません。けっこう信号無視をしている場合があるからです。 長い直線ルートを歩くときは、大きな交差点は別として、どの横断歩道に信号があるかどうかまでは私はおぼえていません。 ですから、車が全く通っていない状態がしばらく続くときは、渡ってしまうこともあります。 その道路に信号があるのかないのかは、わたしが記憶していない限りわからないのです。 困るのは、すぐ近くで大きな音で工事をしているときです。あまり音が大きいと、まわりの車の音が聞こえないからです。 こういう時は、かすかに聞こえるだけの音と、進行方向に歩く人の気配が頼りです。 そんなときに助かるのは、二人で大きな声で会話しながら横断歩道を渡る人です^^。その声を頼りについて渡れるからです。 たまに交差点にいるはずなのに車の流れがどちらに流れているのか、いくら聞いてもわからない、ということもあります。 これは、私たちが正しく横断歩道の前についておらず、渡るべき道路に対して直角に立っていない場合です。ある程度以上向きがずれると、いくら耳で聞き取ろうとしても車の進行方向がわからなくなるのです。 この場合は車の音、まわりの人の動く音、靴底の感触を総動員して正しい場所へと慎重に進みます。 向きが横断歩道に対して斜めに立っていたりすると、横断歩道を渡っているつもりで交差点のど真ん中に出てしまうことがあるからです。 これをやってしまうと、へたをすると交通整理のおまわりさんのように車が左右をどんどん通り過ぎる中に取り残される、ということにもなりかねません。 実は、私はこれまでに何度かこの状態になって親切なドライバーさんに助けてもらったことがあります。 ある時は、横断歩道を渡ろうとして耳をすませても、いくら待っても車が通る音がしないので渡り出したら、そばにいたミニパトカーの婦人警官にマイクで 「そこ、赤信号ですよ!」と注意されてびっくりしたこともありました。見ていたのなら、渡り始めに注意してくれれば良いと思うのですが^^;。 横断歩道と交差点での何気ない横断も、実はけっこう聴力と想像力をフルに使っているのでした。 ☆今日読んだ本: 『カイチュウ博士と発酵仮面の「腸」健康法』藤田紘一郎、小泉武夫著 『人かサルかと問われても』西江雅之著 『ミュータント・メッセージ』マルロ・モーガン著 『ドルフィン・コネクション』ジョーン・オーシャン著 ☆今日聴いた音楽: 『ベスト・オブ・エマニュエル・パユ』エマニュエル・パユ 『YUMI』山形由美 『ブラームス:後期ピアノ作品集』バレリー・アファナシェフ 『バッハ:無伴奏チェロ組曲』ヨー・ヨー・マ 『リボルバー』ザ・ビートルズ スポンサーサイト
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音ト手ザワリノ犬タチ
2014 / 03 / 16 ( Sun ) 私は元盲導犬のスースーと、新人(?)盲導犬シジミと一緒に暮らしています。
二頭ともあまり体格が変わらないメスのラブラドールです。 彼らの顔を見ることのできない私は、犬たちを音と手触り、匂いなどで区別しています。 チリ、チリ、チリ・・・。これは小さな丸い鈴を首輪につけているスースーの音です。 チリン、チリン、チリン・・・。これは小さなカウベルをつけたシジミの音です。 タタッ、タタッ、タタッ。これはスースーが走るときに立てる音。 バラバラバラッ、バラバラバラッ・・・。これはシジミが走るときに立てる音。 「クゥーン、クゥーン」これは、ごはんを準備しているときにスースーが待ちきれなくて出す声。 「ブゥーン、アゥーン」これは、予期せぬ時にシジミが突然出す声。何でそうしているのかは今はわかりません。 「ハアハアハア」これは興奮したり走ったりしたときのスースーの息づかい。 「・・・。」シジミは興奮したり走ったりしてもなぜか息が乱れません。犬っぽい「ハアハア」という音を立てることがほとんどないのです。 近くの野原で思いっきり遊んでも、スースーの息づかいは聞こえますが、シジミからはカウベルの立てる音しか聞こえません。 「プシュウ」これはときどきスースーがするスカシッペの音。ちょっと臭いです。 「パンパンパン!」これはシジミのしっぽが家じゅうの物を叩く音。 毛並みがやわらかく、耳が長く、頭の骨を触ってちょっといびつなのがスースーです。 スースーの耳のやわらかさは、京都名物「生八ツ橋」にそっくりです(笑)。 毛並みがちょっと堅くて、耳が短く、下あごの左側に一本堅いヒゲがあるのがシジミです。 首輪の鈴が丸いのがスースー。ハンドバッグみたいな形のカウベルがシジミです。 スースーにはほとんど体臭がありません。 シジミは臭くはないですが、ちょっと特徴のある匂いがします。シジミを知っている人は、久しぶりにシジミに会うと「このシジミの匂い、なつかしい!」と言います。 顔をなめられるとき、スースーの舌は長くてなめらかです。ちょっぴり口は匂います。 シジミは、耳と同じように舌もちょっぴり短めで、けっこうザラザラしています。 スースーは、こちらに向かってまっすぐやってきて、私を驚かせないようにちょっと間をおいてから私にとびつきます。 シジミは、わたしのそばに来て私の周りをグルグル回ってからいきなり私にとびついてくるのでときどき前足で顔にパンチをくらいます(笑)。 こんな風にスースーとシジミを区別できているつもりでも、最近仲良しの二頭が入り乱れていると、まだけっこう間違えます。 庭のトイレをさせようとして腰にシジミ専用のベルトをつけていると、「され、スースーだよ」と家族に言われたり。 散歩に出かけようとしてハーネスをつけたらそれもスースーだったり(笑)。 そう、私が何かをしようとするときにすばやく反応するのがスースーなのです。 あれ、シジミは?と思うと、シジミはそばの床に寝そべってしっぽを振っていたりするのでした(笑)。 ☆今日読んだ本: 『火事を知らせる猫、贈り物をする犬ー心を打つ動物たちの本当の話』クリスティン・フォン・クライスラー著 『ろうそくの炎がささやく言葉』管 啓次郎、野崎 歓編 『ミュータント・メッセージ』マルロ・モーガン著 ☆今日聴いた音楽: 『chanson dans la nuit』永沢真澄 『カンタービレ』ヨー・ヨー・マ 『ノスタルジー』西本智実指揮 ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団 『ラバー・ソウル』ビートルズ |
シジミのしっぽ
2014 / 03 / 12 ( Wed ) シジミは、いつもしっぽを振っています。
これは、訓練で初めてであったときから変わりません。 「シジミ!」と呼ぶと小走りにやってきて、しっぽを思いきり振りながら、私のまわりをグルグル回ります。 人間だったら、いつもきげんよくニコニコしている子どもみたいです(笑)。 そんなシジミでも、初めて行く場所は緊張するようです。 先日、私は治療関係の勉強会にシジミと一緒にでかけました。 家の最寄駅からいつもと逆方向の電車に乗り、シジミにとっては初めての駅に向かいます。 そして駅から歩いて10分くらいのところにある知り合いの治療院まで行くのです。 そこへは、これまでスースーと何年も通って来ました。 ところどころ音の手がかりや誘導ブロックなどでわかりにくいところがあるので、最近では駅からはほとんどスースーにまかせていました。 最初のうちはスースーも時々迷いましたが、慣れてきたら三か月ぶりに行っても迷わず連れて行ってくれるようになっていたのです。 今回は、シジミにとっては初めての場所なので、勉強会に参加する知り合いと待ち合わせしてもらって、ルートを確認しながら行きました。 これをあと二回くらい繰り返せば、シジミもこのルートをおぼえてくれると思います。 初めての場所なので、シジミは途中で何度か身体をブルブルッとさせました。 これは自分の緊張をほぐそうとするときに見られる行動です。 けっこうものごとに動じないシジミも、さすがに緊張しているのでした。 勉強会が終わり、シジミと私は帰途に着きました。 会が終わるまでは治療室の片すみで爆睡していたシジミでしたが、時間もけっこう遅くなったので、さすがにちょっと疲れたようです。 駅のホームで帰りの電車を待っていても、しっぽは垂れたままで、ちょっと元気がありません。 「今日は初めてなのに、がんばったね、えらいね!」 私が頭をなでながら声をかけると、そのときだけしっぽを振って、上を向いて私の顔をペロッとなめます。 電車が来て、シジミは椅子に座った私の足元に伏せて、また少し眠りました。 やがて私の家の最寄駅に着きました。 「よしよし、もうちょっとだね。おっ、今の障害物うまくよけたねえ。グッド!」 私は、ちょっぴり元気がないシジミに多めに声をかけながら歩きました。 その効果もあってか、シジミは、順調に帰り道を歩いてゆきます。 これまでうろ覚えでついつい通り過ぎがちな細い曲がり角もうまく見つけて曲がりました。 そこを抜ければ、我が家の前へ通じるまっすぐな道に出ます。 そこから100mほどで我が家です。 スースーもシジミもこの道に出るともう家だ、とわかります。 道に出たとたん、シジミのしっぽがブンブンと振られ、歩行も足早になりました。 それはまるで「おうちだ!おうちだ!」と言っているようでした(笑)。 家に着いて、「ピンポーン」とインタホンを鳴らします。 ドアを開けると、 「おかえり~!」とスースーとおかあさんがお出迎えです。 ちょっぴり元気がなかったシジミも、スースーに会ったら扇風機みたいにしっぽを振ってじゃれ合います。 「シジミ、ごくろうさま!」 シジミは思い切りしっぽを振ってこたえるのでした。 ☆今日読んだ本: 『火事を知らせる猫、贈り物をする犬ー心を打つ動物たちの本当の話』クリスティン・フォン・クライスラー著 『出会いの不思議』河合隼雄著 ☆今日聴いた音楽: 『ブルー・ガーデニア』ダイナ・ワシントン 『吉松 隆:アイノラ抒情曲週』館野 泉、平原あゆみ 『優しき玩具:吉松 隆ギター作品集』福田進一 『主よ、人の望みの喜びよ:バッハギター作品集』福田進一 『ノスタルジー』西本智実指揮 ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団 |
時間デスヨ
2014 / 03 / 10 ( Mon ) 今日の夕方、昼過ぎの治療の後、少し時間が空いていたので昼寝をしました。
先週けっこう忙しかったのと、昨日は一日中外出していたのでちょっとくたびれていたみたいです。 ひとしきり眠った後、まどろんでいたら、ベッドの左側でフンフン、と匂いを嗅ぐ音がしました。 そして、濡れた冷たい鼻先が耳に押し付けられました。 すると今度は右側から鼻先が近づいてきて、私のほっぺたをペロリ、となめました。 「あれ、スースー?それともシジミ?」 こういう時、たいていはどちらかが「ねえ、遊ぼうよ」と誘っているのです。 「今は寝ているからだめ。あとで。」 スースーもシジミも、たいていは私があまり反応しないでいると、あきらめてその場にうずくまるか、向こうへ行ってしまいます。 ところが、今日はなかなかやめてくれません。 「あれ、スースーもシジミもいるの?」 気づくと、どちらか一頭ではなく、スースーとシジミの両方が左右からいろいろとアピールを続けているのでした。 左右から、冷たい鼻先を押しつけたり、ベッドの上にあごをのせたりを繰り返します。 どうも何かを私に知らせようとしているようです。 「・・・これは遊んでよ、のアピールじゃないな。」 私は音声時計の時刻を確かめました。 それは、いつもの食事時間の5分前でした。 スースーとシジミは、「ごはんの時間だよ」ということを知らせに来ていたのです(笑)。 控えめなアピールは、私が眠っていたので気を使っていたのかも知れません。 私はベッドから起き上がりました。 「よし、わかったよ。じゃあ、ごはんだ!!」 スースーとシジミは、しっぽを振りながら、自分たちのケージへとかけてゆきました。 そのとき私には、「わーい!」というスースーとシジミの声が聞こえたような気がしたのでした(笑)。 ☆今日読んだ本: 『火事を知らせる猫、贈り物をする犬ー心を打つ動物たちの本当の話』クリスティン・フォン・クライスラー著 『カイチュウ博士と発酵仮面の超健康法』藤田紘一郎、小泉武夫著 『日本一心をゆるがす新聞の社説』水谷もりひと編 ☆今日聴いた音楽: 『ソングズ・イン・ア・メロウ・ブード』エラ・フィッツジェラルド 『ミズーリの空高く』チャーリー・ヘイデン・パット・メセニー 『ボノファイド』リチャード・ボナ |
超常現象?!
2014 / 03 / 04 ( Tue ) 先日の夜のことです。
私はスースーとシジミに庭でトイレをさせようとしていました。 トイレは、まず先住犬であるスースーを庭に出します。 これはスースーが「トイレに出るのは私が先」と決めているようなので、必ず先に出すのです。 私とシジミはトイレの準備をしながら、スースーが庭からリビングのサッシのところまで戻ってくるのを待っていました。 シジミは、外出時にトイレをさせることも多いので、慣らすためにトイレ専用のバッグをつけてから庭に出します。 そのとき、シジミは床にすわった私の左横に立っており、まわりには誰もいませんでした。 トントン! 誰かが私の右肩を叩きました。 「え?何?」と言って私は右後ろを振り向きました。 でも、そこには誰もいません。 「あれ、今のは何?気のせい?」 おかしいな、と思いながら前を向いた時です。 トントン! もう一度、今度は間違いなくはっきりと誰かが私の右肩を叩きました。 「えっ!一体誰?!」 シジミは私の左側に立っているので、右後ろには誰もいるはずがありません。 私は背筋が寒くなりました。 後ろを振り向けないまま、私の頭の中は半分パニック状態です。 「これは超常現象?見えない存在が私に何かを知らせようとしてるのか?どうしよう!」 するとさらに肩が叩かれました。 トントン!・・・パンパンパン! 「あれ、なんだかおかしい。もしかして・・・これは。」 それは、シジミのしっぽなのでした(笑)。 シジミは私の左側にいるのに、あまりに思い切りしっぽを振っているので、しっぽが勢いあまって180度以上降られて、しっぽの先が私の右肩まで届いていたのでした。 「あー、びっくりした!なあんだ、シジミのしっぽか!」 私がそう言うと、シジミがこっちを向きました。 そしてしっぽをますます激しく降ってから、私の顔をペロッとなめたのでした(笑)。 ☆今日読んだ本: 『火事を知らせる猫、贈り物をする犬ー心を打つ動物たちの本当の話』クリスティン・フォン・クライスラー著 『自然との対話ー木や草花、動物たちとつながる生き方』イレーネ・ファン・リッペ=ビースターフェルト著 『日本神話の源流』吉田敦彦著 ☆今日聴いた音楽: 『ベスト・オヴ・エマニュエル・パユ』エマニュエル・パユ 『YUMI』山形由美 『ボノファイド』リチャード・ボナ 『ジャコ・パストリアス』ジャコ・パストリアス |
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