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10秒間の長いためいき
2018 / 02 / 18 ( Sun )
シジミは現在5才、こんどの春には6才になります。
盲導犬のキャリアとしては折り返し地点という時期にあたります。

シジミも人間で言えばそろそろアラフォー女子(?)です。

これまでは、シジミは若くてまるでアスリートのように弾力のある筋肉をしていて、さわってみても筋緊張があまりなく、スースーにやっていたような鍼(皮膚に刺さない鍼)や筋緊張をゆるめるマッサージはあまりやっていませんでした。
でも年齢を考えると、これからは少しずつ鍼やマッサージのケアが必要かな、と思うようになりました。

シジミは、しょっちゅう私の所へケアの催促をしてきます。前脚で私の脚をパンパンと叩いて「ねえ、マッサージしてよ」と言って来ます(笑)。
これは、私が初めて訓練でシジミに出会ってマッサージをしてあげてからの習慣になっています。
以前の記事『シジミ、マッサージに出会う』にも書きましたが、私は盲導犬の訓練でシジミと初めて出会って居室に泊まったときにシジミにマッサージをして、それ以来シジミはそれがお気に入りになったのでした。

もっともわが家に来た頃はシジミはまだ若かったので、マッサージといいってもリラクゼーションやヒーリングを目的としたものを主にやっていました。

最近はリラクゼーションてきなマッサージだけでなく、皮膚に刺さない鍼をつかっての全身調整や、首肩、下半身などの筋緊張をゆるめるマッサージもするようになりました。

シジミが前脚で私の脚をパンパン叩いてケアをリクエストして来たら、私は床にすわります。
するとシジミがやってきてまず私の顔をひとしきりなめます。この事前に私の顔をなめるのがシジミ流の「ありがとう」のサインです。
シジミの場合はこれが「先払い」らしいです。スースーのときはマッサージが終わってから私の顔をなめたので、スースーは「後払い方式」だったようです(笑)。

それからシジミは、横になって私のひざに頭をのせます。
私は先ず横になったシジミの頭のてっぺんのツボから始めて、背骨の両脇のツボに皮膚に刺さない鍼(人の治療に使う専用の金属の棒)を上から下へと順番に当ててゆきます。これはにんげんの治療の場合と変わりません。
鍼を当てたツボが反応すると、私の手に電気のようなピリピリした感じが伝わってきて、やがて鍼を持った指先が温かくなってきます。これは当てている鍼が効いている、という反応です。
スースーはこれをやると、必ず気持よさそうに「ウーン」とうなってお腹を見せてひっくり返ったものでした(笑)。シジミはそこまで反応しませんが、「フー」とため息をついてしんたいの力が抜けてグンニャリしてきます。

これをやった後に、首肩、腰、しっぽの付け根、前後の脚の筋緊張がある部分をマッサージでゆるめてゆきます。
そして最後にメンタルに関わる気のながれを調整して終わります。このメンタル的な調整は、仕事で緊張する場面も多い盲導犬にとって必要なことだと私は考えています。
これらのケアがひと通り終わると、シジミは完全に脱力して身体はフニャフニャになり、身体のまわりの空気の温度が上がってまるで身体のまわりに見えない毛布がかけあられたようになります。

先日、こんな感じで以前より時間をかけたケアを行なったら、シジミが気持よさそうに
「ヴ~~~」と声が混じった10秒くらい続く長~いため息をつきました(笑)。
10秒も続くこんなに長いため息は初めて聞いたので、この新しいケアはけっこう気持ち良かったようです。
そして、ケアを終えてひざから頭をおろしても、シジミは全く反応せずに、身体をにゅ~っと床に伸ばしたまま爆睡していました。

シジミの表情は私には見ることができませんが、きっとその寝顔はちょっと笑っているように見えたと思います(笑)。

☆最近読んだ本:
『犬が来る病院』大塚敦子著
『幸田文どうぶつ帖』幸田 文著
『森茉莉 私の中のアリスの世界』森茉莉著
『心にのこった話』鶴見俊輔ほか編
『三崎日和(いしいしんじのごはん日記2)』いしいしんじ著
『学校で教えてくれない音楽』大友吉秀著
『空の中』有川 浩著
『意識は傍観者である 脳の知られざる営み』デイビッド・イーグルマン著

☆最近聴いた音楽:
『フィルモア・イースト・ライブ』オールマン・ブラザース・バンド
『ストレンジ・ソングブック』細野晴臣
『矢野山脈』矢野顕子
『ゴンチチ ライブ』ゴンチチ
『ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」~ラベル編曲』ドゥダメル指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
『バルトーク:ピアノ作品集』コチシュ


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22 : 14 : 44 | こんなこともありました | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
盲導犬は「かわいそう」か その2~かわいそうな状況とは何か
2018 / 01 / 25 ( Thu )
「盲導犬はかわいそうか」という記事のタイトルを自分で考えたものの、ふと思ったことがあります。
それは、そもそも「盲導犬は~」というように、日本に1000頭近くいる盲導犬をまとめて判断するのって、無理があるのではないか、ということです。
これは、数の規模は違うけれど「家庭犬(飼い犬)はかわいそうか」という問いを考えてみると、そのおかしさがはっきりします。
もし「家庭犬はかわいそうか」と問われても、、
「家庭犬って言ったって、厖大な数の犬がいて、それぞれの状況が違うのだから、まとめて判断するなんて無理だろう」
と誰でも思うのではないでしょうか
おそらくそれらの犬の中には、飼い主といつも一緒に幸せに暮らす犬もいれば、ちゃんとした心身のケアを受けられていないかわいそうな状況の犬もいて、それらの犬をひとくくりにはできないからです。
それは、「人間はかわいそうか」とか「動物はかわいそうか」という問いと同じで、個々の状況の違いを考慮しないで判断してしまうすごく大雑把な考え方だと思います。

盲導犬というと「かわいそう」と判断してしまうのも、それに似ていないでしょうか?
つまり日本に1000頭近くいる盲導犬全体をまとめて「かわいそう」と判断するのには家庭犬と同じように無理があるのでは、ということです。

これに対して、「いや、そもそも犬に仕事をさせる盲導犬というシステム自体が犬にとってかわいそうなのだ」という意見もあるかも知れません。
前の記事『盲導犬はかわいそうか』にも書きましたが、私は盲導犬に仕事をさせること自体を「かわいそう」だとは思っていません。
なぜなら盲導犬は教えられたことがうまくできたときにほめられる、という訓練を受けてきているので、障害物をよけたり段差で停まったりするたびにユーザーから「グッド!」とほめられることに喜びを感じているからです。

このように、訓練によってできるようになった仕事をした結果「よくできたね」とほめられることは、いぬにとってうれしい、と感じるものですし、それは私たち人間も同じなのではないでしょうか?
そしてもし仕事の中で犬が喜びを感じるのであれば、その仕事をさせることは必ずしも「かわいそう」ではないと私は思います。

それは逆に言えば、もし犬が仕事に苦痛を感じるばかりならば、その仕事をさせることは「かわいそう」かもしれない、ということでもあります。
だから「かわいそうな状況」の盲導犬がいるとすれば、それは盲導犬の仕事そのものではなく、しごとのさせ方や仕事を指示するユーザーとの関係から生じるものなのではないか、と私は考えています。

したがって私は盲導犬全体が「かわいそう」ということではなく、「かわいそうな状況にある盲導犬」はいるかも知れないと考えています。

大切なのは、個々の状況について考慮せずに「盲導犬はかわいそう」とか、逆に「盲導犬はかわいそうじゃない」とか思ったり言ったりすることではないと思います。
そういう議論は、犬が実際に置かれている個々の状況を把握した上での議論だとは思えないからです。

それより大事なことは、もしかわいそうな状況にある犬がいるのならどうやってその状況を改善することができるのか、そのような状況にならずにユーザーも犬もお互い幸せを感じていられるためにどうしたら良いのか、といったことを実際に考えたり実践したりすることなのだと思います。

では、かわいそうな状況の盲導犬、とはどんな状況なのでしょうか。
どういう状況を「かわいそう」と思うかはおそらく人によって違います。
なので、これはあくまで私の個人的な意見ですが、私は次のような状況が「かわいそうな状況」だと考えます。
①日常の生活で食事、健康管理、身体の手入れ、遊びや運動など、犬のQOL(生活の質)を保つことが考慮されていない状況
②ユーザーと犬の関係がうまくいっておらず、犬がユーザーと一緒にいても喜びを感じることができない状況
③犬の仕事に対して感謝やほめ言葉などがユーザーからかけられない、犬に対して愛情が注がれていないなど、犬の精神的な喜びが与えられていない状況
④ユーザーの歩行や精神的なサポートという仕事を何年も続けてくれている犬に対して敬意が払われていない状況

この①から④までの状況は、当事者やまわりの関係者が気づいて対処すればいつでも改善できるものなので、これらが守られていれば盲導犬が「かわいそう」な状況になることはあまりないように思います。

なんて書いていても、私もいつもすべてをうまくやっている、というわけではありません(笑)。
折に触れて、それぞれがおろそかにはなっていないだろうか、と自分でチェックし続けています。
そして、どうすれば良い状況にできるのだろう、としょっちゅう頭を悩ませています。
これは盲導犬ユーザーである限りずっと続くのだろうと思います。

現在の私のパートナー犬のシジミは、一般的な盲導犬のイメージとはちょっと違う犬かも知れません。
主張がかなりはっきりしていて、気持が顔の表情にも態度にも出るタイプです。
そして「仕事は楽しくないとイヤ」というはっきりしたポリシーを持っています(笑)。
なので、いわゆる「どんな状況でも命令に忠実にしたがって黙々と仕事をする」といった良く持たれがちな盲導犬のイメージとはかなり違います。
気持ち良く仕事をしてもらっていれば、しっぽを振ってグングン歩きますが、私の対応が良くないとだんだん眉間にシワが寄ってきて(笑)、仕事の集中が切れてきます。
私はシジミの歩き方がなんだか楽しそうじゃないな、と思ったときは、目の見える人に
「今、シジミはどんな顔をしていますか?」と聞くことがあります。
その答えが、
「シジミちゃん、なんだか眉間にシワが寄っていますよ」という時は、理由を考えて、その状況を変えるように努力します(笑)。
私の経験から、シジミが理由もなく「楽しくなくなっている」ということはなく、ほとんど私の対応に原因があるからです。
もちろん、そういう場合とは別に、たまに仕事中にシジミがじぶんのワガママを出すこともありますが、それはちゃんと注意をします。
こういう所は、なんだか社員教育や子育てに似ているな、とよく思います。

シジミは行動がけっこうわかりやすいので、「あ、こんな風に扱ってはだめなんだな」と学ばされることがおおいです。

一頭目のスースーは表情や態度に出すタイプではなかったのですが、今から考えると、初めての盲導犬に慣れない私がすることをずいぶん大目に見てくれていたのかも知れません。
いまさらながら、スースーには、よくわかっていなかった私を大目に見てくれたこと、そしてそれでもいつも笑顔でいてくれたことに感謝したくなるのでした。

そして、これを書いてている私の近くでしっぽを振りながら、こちらをじっと見て「私は?」と言っているみたいなシジミミにも、もちろん感謝、です(笑)。


☆最近読んだ本:
『利き蜜師物語 銀蜂の目覚め』小林栗奈著
『風の名前』パトリック・ロスファス著
『ニューヨークの魔法の散歩』岡田光世著
『働く動物と』金井真紀著
『犬が来る病院』大塚敦子著
『続ガイジンはつらいよ』ドン・マローニ著
『ではまた、あの世で 回想の水木しげる』大泉実成著
『河童の三平』水木しげる著
『ねぼけ人生』水木しげる著
『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』フランス・ドゥ・バール著
『これからの世界を作る仲間たちへ』落合陽一著

☆最近聴いた音楽:
『ラディリカン』クロノス・カルテット&トリオ・ダ・カリ
『夜のアルバム』八代亜紀
『4TO3』小川美潮
『檸檬の月』小川美潮
『南へ』モノンクル
『雪のための50の言葉』ケイト・ブッシュ
『フィルモア・イースト・ライブ』オールマン・ブラザース・バンド
『レッド』キング・クリムゾン
『アイランド』キング・クリムゾン
『矢野山脈』矢野顕子
『シューベルト:ピアノソナタ第13・21番』ラドゥ・ルプー

『ミリアド』ジェリー・オコナー
17 : 48 : 33 | 盲導犬 | トラックバック(0) | コメント(2) | page top
「おじさん、目が見えないの?」
2017 / 11 / 15 ( Wed )
先日、シジミと私が散歩をしていたときのことです。

私は、いつも散歩で通る小学校の裏手の細い小道のところでシジミにトイレをさせようとしていました。
そこはいつもひとけがないので、よくシジミにトイレをさせるのです。
私がシジミにトイレ用バッグをつけてトイレをさせようとしていると、何人かの小さな足音が聞こえて来ました。
そして、
「あ、ワンちゃんだ!」
とかわいい声がしました。
ふとそちらを向くと、小学校一年生くらいの小さな男の子たちがいました。ちょうど下校時間でこの道を通りかかったようです。

「ワンちゃん、かわいい!」
たちまち私とシジミのまわりに子どもたちが集まって来ました。

やがてそのうちの一人が私がシジミからはずして肩にかけていたハーネスにきづきました。
「あっ、『お仕事中』って書いてある・・・。えっ、もしかして盲導犬?」
私「そう、この子は盲導犬なんだよ」
この私の言葉に好奇心が刺激されたのか、まるで電球がパッと点灯したように子どもたちが反応したのがわかりました。
まるで「おおっ!」という声にならない声が聞こえるようでした(笑)。

すぐに、子どもたちは思いついた疑問をどんどん投げかけて来ました。
「えっ盲導犬なの?名前は何ていうの?」
「ねえ、さわってもいい?」
「おじさん、どこから来たの?」
「おじさん、どこへ行くの?何しに行くの?」

「ねえ、おしりのところに何をつけてるの?」
私「ああ、その袋にトイレをするんだよ」
「袋の中に何が入ってるの?見てもいい?」
「トイレって、ウ。コ?」(笑)

シジミはこどもたちに囲まれてしっぽを振っています。もうトイレどころではないようです(笑)。

やがて私はここでのシジミのトイレはあきらめて、歩き出すことにしました。
私「さあ、トイレをしそうにないからそろそろ行くね。」
「おじさんどっちに行くの?」
私「こっちだよ」
「おれたちも、いっしょ~♪」

そこで私とシジミは子どもたちと一緒に歩き始めました。
子どもたちはやたらにひっついて歩くので、なんだかシジミと私のまわりをかこむ、おみこしのかつぎ手たちのようです(笑)。
私「あのさ、つまずいたら危ないから、もうちょっと離れてくれない?」

しばらく歩いていると、一人の子が聞いて来ました。
「ねえおじさん、目が見えないの?」
私「うん、おじさんは目が見えないんだよ。」
「ふぅ~ん・・・。」
私「あ、シジミ、ちゃんと前を見て!」
「えっ、おじさんなんでわかるの?それ(ハーネス)を持っているからわかるの?」
子どもたちのすなおでまっすぐな質問は、聞いていてすがすがしいです^^。

やがて向こうから同級生らしい男の子がやってきて、私たちの一行を見つけました。
「あっ、盲導犬だ!盲導犬にはさわっちゃいけないんだよ!」
「知ってるよ~だ!。でも、おれたちさっきさわっちゃったもんね~!」

やがて私とシジミが右へ曲がるポイントにやって来ました。
「じゃあ、おじさんたちは、ここで右に曲がるね。シジミ、ライト、ゴー!」
「えっ、そっちに行っっちゃうの?じゃあバイバイ!」
私「ああ、バイバイ」
すると、私たちと同じ方向に行く子どもたちが答えました。
「これたち、こっち曲がるもんね~♪」

やがて、「バイバイ」というあいさつとともに、子どもたちは一人、また一人減ってゆき、最後の一人と「バイバイ」した後、シジミと私は家へ向かったのでした。

次の日、あの子たちは教室で
「きのう、おれたち盲導犬に会っっちゃったもんね~♪」
なんて、シジミと私のことを話してくれたでしょうか?


☆最近読んだ本:
『忘れられた巨人』カズオ・イシグロ著
『オルフェオ』リチャード・パワーズ著
『しごふみ2』雨宮 了著
『シンギュラリティは近い』レイ・カーツワイル著 
『31歳で天才になった男 サヴァンと共感覚のの謎に迫る実話』ジェイソン・パジェット、モーリン・シーバーグ著
『意識は傍観者である 脳の知られざる営み』デビッド・イーグルマン著

☆最近聴いた音楽:
『バルトーク:ピアノソロ作品集3』ゾルタン・コチシュ
『ラベル:ピアノ協奏曲ト長調、左手のためのピアノ協奏曲ほか』ゾルタン・コチシュ イヴァン・フィッシャー指揮ブダペスト祝祭管弦楽団
『シチリアーナ リュートのためのアリア』つのだたかし
『ホルスト:組曲「惑星」』アンドレ・プレビン指揮 ロンドン交響楽団
『クロスアイド・ハート』キース・リチャーズ
『ベスト・バラード・コレクション』ロッド・スチュワート
『アメイジング・バド・パウエルvol.1』バド・パウエル
18 : 00 : 00 | こんなこともありました | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
盲導犬とユーザーの複雑な関係~上司と部下?それとも親子?
2017 / 11 / 10 ( Fri )
盲導犬とユーザーの関係って、一般的に思われているよりは複雑な関係です。

ある時知人に、
「盲導犬とユーザーって、親子みたいだったり上司と部下みたいだったりして、けっこう複雑な関係なんですよ」
と話したら、
「エッ?単にボスであるユーザーに忠実に従う盲導犬、という関係じゃないんですか?」
と驚かれました(笑)。
盲導犬というと、やはり一般的には「命令にいつでも絶対服従する犬」的なイメージが思い浮かぶようです。

たしかに、盲導犬は、ユーザの安全を守るための基本的な行動がしっかり訓練されています。

例えば駅のホームの端のような、そこから落ちたら危険な高い段差にユーザーが近づくと、盲導犬は身体でユーザーをブロックして進路をふさいでユーザーの安全を守るように訓練されています。

先日、屋外に作られた実物大の駅のホームを歩く機会があったので、私は試しにホームから線路に向かってまっすぐ歩いてみました。そのまま行けばホームから転落してしまう状況です。
するとシジミは、私の盲導犬となってからの三年間で一度も経験したことがなかったその状況にすぐに反応して前に出て私の身体をブロックしたのでした。
「シジミ、グッド!!」
シジミはしっぽを振って、たぶんドヤ顔をしていたと思います(笑)。
このように、盲導犬は基本的な行動はしっかりと身体でおぼえています。

でも、盲導犬は命令を機械的にこなすロボットではありません。
とても賢い犬であるとともにいろんな感情を持ち、自発的に考えて行動もする生身の存在です。
そして盲導犬歩行というのは、ユーザーと盲導犬がそれぞれ責任を分担して行なっている共同作業なのです。
それは目的地を伝えればあとは何も言わなくても犬がユーザーを引っ張っていってくれる「自動ナビケーション・システム」のようなものではないし、犬のすべての行動をユーザーが命令しているのでもありません。
場面に応じて、或る時は犬が自主的に判断して行動し、ある時は必要に応じてユーザーが指示を出しているのです。

なので、盲導犬歩行がスムーズに行くためには、人と犬のお互いの「息が合う」ことが必要です。
まず、人と犬は同じペースで歩かなければなりません。犬が人より速ければ人が引っ張られてしまうし、遅ければ人が犬を引きずるようになってしまうからです。
そして犬は、障害物をよける時、ユーザーの身体の幅を意識してユーザーの進退が障害物に当たらぬように微妙に歩くコースを変えてユーザーが障害物に当たらぬようにしています


だから、いくら盲導犬がしっかり訓練された犬でも、初対面のユーザーと盲導犬がコンビを組んですぐに完璧な盲導犬歩行ができるわけではありません。
このことは、人間同士が仕事やスポーツで初めてコンビを組むときと変わらないと思います。
人間同士でも、人と犬でも、コンビが「息が合うようになる」のには時間がかかります。
お互いの性格や長所と短所、得意なことと不得意なこと、身体の動かし方のクセ、仕事に対する姿勢・・・。そんなことが分かり合えて初めて仕事(この場合は盲導犬歩行)で「息が合う」ようになるのです。

さらに、盲導犬ユーザーは、仕事以外の面でパートナーとなった犬のことをよく知っておく必要があります。
なにせ、コンビを組んだら最低8年間、ほぼ24時間生活と行動を共にし、世話をするパートナー犬なのですから。
トイレの一日の回数とタイミング、水を飲む回数と量、どんな遊びやオモチャが好きか、身体の手入れやボディケアはどんなことが好きなのか、身体や心の健康面で気をつけるべきことは何か、どういうときにうれしそうにするのか、どういうことがキライなのか・・・。
こういうことは、犬ごとに違うので知っておく必要があるのです。

盲導犬がハーネスをつけてユーザーとコンビを組んで仕事をしている時と、家の中でハーネスをはずして自由にしている時では、ユーザーと盲導犬の関係も違います。
盲導犬歩行の「お仕事中」は、ユーザーと盲導犬は共同作業のパートナーであり、最終決定をするユーザーが上司で盲導犬が部下のような関係です。ユーザーは盲導犬がきちんと仕事をするように指示し、ミスをすれば注意し、うまくできればほめます。そして盲導犬ができるだけ気持ち良く仕事が出来るように心がけています。
家の中では、ユーザーとハーネスをはずした盲導犬は、一緒にくつろいだり、遊んだりして気ままに時間を過ごします。犬も家では甘えん坊で遊び好きなかわいい一頭の犬です。こんな時ユーザーと盲導犬は親子と小さな子どものような関係です。食事や身の回りの世話をしつつ、ユーザーは犬がかたわらにいてくれることで癒されてもいます。

盲導犬とユーザーがコンビを組んでから、お互いのことがわかり合えるようになり、歩行面でも生活面でもほぼ問題がなくなり、「息が合ってきたな」と思えるようになるには、だいたい三年かかります。
以前に先輩の盲導犬ユーザーからも、「特に問題なく安心して歩けるようになるには三年くらいかかるよ」と言われていたので、これはわたしだけではないようです。
もちろん犬は基本的な訓練をしっかり受けて来ているので、それまでにもあまり危険な目に遭ったりすることはありませんが、やはり不安材料がなく安心して歩けるようになるにはそれくらい時間がかかります。

私は二頭目の盲導犬のシジミがやってきたとき、すでにユーザーとしては8年間の経験があったので、二頭目になったら以前より早く「息が合う」うようになるだろう、とおもっていたのですが、一頭目のスースーとシジミは、性格も全く違うし、得意なことや不得意なことも全く違ったので、結局シジミと「息が合う」ようになるのにやはり三年かかりました。
犬が変われば、いろんな状況はほとんど「リセット」されてしまうようなものだからです。

誰かとパートナーを組む、ということは、相手が人でも犬でも、やはりそう簡単にはいかないものなのですね(笑)。

私は、犬という人間と異なる種でありながら盲導犬としての訓練を受け、視覚障害者の歩行をサポートし、ユーザーの世界を広げ、ほぼ24時間かたわらにいてユーザーの心の支えにもなってくれるパートナー犬に対して心からの敬意と感謝を感じています。
だから、私はパートナーである犬にできるだけ気持ち良く仕事をしてもらいたいし、生活の上ではできるだけ幸せを感じていてほしいと思っています。

現在、私とシジミはコンビを組んで四年目になります。コンビもだいぶ板についてきました。
これからの年月も、大事なパートナーであるシジミが、仕事でも生活でも、できるだけ笑顔でいてくれるようにしてゆきたい、と改めて思うのでした。


☆最近読んだ本:
『忘れられた巨人』カズオ・イシグロ著
『オルフェオ』リチャード・パワーズ著
『サクラダ・リセット』河野 裕著
『ノワール・レブナント』浅倉秋成著
『しごふみ』雨宮 了著
『淡雪の記憶』知念実希人著
『シンギュラリティは近い』レイ・カーツワイル著 
『31歳で天才になった男 サヴァンと共感覚のの謎に迫る実話』ジェイソン・パジェット、モーリン・シーバーグ著

☆最近聴いた音楽:
『バルトーク:ピアノソロ作品集1・2』ゾルタン・コチシュ
『吉松隆:タピオラ幻景』舘野 泉
『ディーリアス:管弦楽集』サー・トーマス・ビーチャム指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
『北欧の冬』クラヤ
『水野旅』アニューシュカ・シャンカール
『アトランティック・クロッシング』ロッド・スチュワート
『デイドリーム』アン・サリー
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「ありがとう」のサイン
2017 / 08 / 04 ( Fri )
シジミがわが家に来てから3年半がたちます。
前の盲導犬スースーとは性格も行動も全然違うシジミですが、私もシジミのしぐさのいくつかがわかるようになってきました。
盲導犬は基本的にはほえないので、ほえ声から犬の意図を察するということはできません。まあ、シジミは前の盲導犬スースーと違って家の中ではかなりよくしゃべるのですけれど、それはまたいつか書くことにします。

私がよくやるのは、シジミのそばにかがんで、顔のすぐ横で質問することです。
私:「シジミ、ここでワンツー(トイレのこと)したい?」
答が「イエス」の時はシジミはすばやくこちらをむいて私の顔をペロッとなめます。「ノー」のときは反応しません。
何かを感謝する「ありがとう」のときもしぐさが決まっています。
そんなとき、シジミはまず私の正面に立ちます。それから一瞬私の顔を見つめてからゆっくりと近づいてきて、私の顔をゆっくりとていねいになめるのです。
このときのなめ方は、すごくうれしくて興奮して私にとびついて顔をなめるときとは全然違います。
ゆっくりとていねいに、心をこめてなめている感じです。
そんなとき、私はいつも頭の中でシジミの「ありがとう」という声が聞こえるような気がするのです(笑)。

この「ありがとう」のサインにも感謝の気持の強さによって違いがあります。
感謝の気持が強いときは、シジミはまず前脚を床にすわっている私のひざのうえにのせてから私の顔をなめます。

シジミが「ありがとう」と伝えてくるのは、マッサージをしてもらう時と、今のように暑い季節なら、保冷剤を手ぬぐいで首に巻いてもらったときです(笑)。

先日も、猛暑日で家の中もけっこう暑く、シジミが暑そうにしていたので、私は冷凍庫から保冷剤を取り出して、シジミに聞いて見ました。
私:「シジミ、これ首に巻く?」
シジミはうれしそうに駆け寄ってきて、頭を下げて首を出し、「お願いします」のポーズをとりました。
保冷剤を手ぬぐいで首に巻くと、「気持いい~」とばかりにしっぽを振っています。
ところが、もう慣れてきたせいか、シジミは「ありがとう」のサインなしにその場を離れようとしました。
これまでちゃんと伝えていた「ありがとう」を省略するのはよくありません(笑)。
私は向こうへ歩いて行こうとするシジミを呼び止めました。
「シジミ、『ありがとう』は?」
するとシジミは「あっ、そうだった」とばかりに私のところへ戻って来ました。
そして、私の正面に立つと、ひざに前脚をのせて、ていねいに「ありがとう」の気持を伝えてきたのでした(笑)。


☆最近読んだ本:
『デルフィニア戦記7-14』茅田 砂胡著
『営繕かるがや怪異譚』小野不由美著
『ハリー・ポッターうらばなし』J.K.ローリング(インタビュー)
『シンギュラリティは近い 人類が声明を超越するとき』レイ・カーツワイル著

☆最近聴いた音楽:
『バッハ:マリンバによる無伴奏作品集1・2』加藤訓子
『バッハ:平均律クラビーア曲集1』グレン・グールド
『ファーザー・オブ・ザ・デルタ・ブルース』サンハウス
『サムシング・フォー・ビル・エバンス』イリアーヌ
『ディシプリン』キング・クリムゾン
『レッド』キング・クリムゾン
『ワン・オブ・ザ・カインド』ビル・ブラッフォード
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